
こんにちは、TAK(@tak_vectorium)です。
今回は、「キャッシュフロー経営」について基本的な考え方から導入方法まで解説していきたいと思います。
キャッシュフローというのは、お金(キャッシュ)の流れ(フロー)のことです。
なので、キャッシュフロー経営を簡単に言えば「お金の流れを重視した経営をしようね」ってことになります。
「お金を重視した経営なんて当たり前じゃん~」と思われている経営者の方は多いですが、実際に日頃の経営にキャッシュフロー経営を活かせている方は(実は)とても少ないのが現状です。
お金の重要性を「意識」はしているけど、「実践」まで移すのは難しいことを表しているとも言えますね。
そこで今回は、以下3つについてシンプルに解説していきたいと思います。
・ キャッシュフロー経営の基本(意味やメリット・デメリット)
・ キャッシュフロー経営を導入している企業事例
・ キャッシュフロー経営の導入方法
日頃、税理士にすべて業務を丸投げしてしまっている方も、良ければ参考にしてみてください。
【こんな方に読んで欲しい記事です】
● リソース不足に悩まされている中小企業の経営者や個人事業主の方
● キャッシュフロー経営の重要性や導入方法を知りたい方
キャッシュフロー経営とは?
まず最初に、キャッシュフロー経営の意味について確認しておきましょう。
繰り返しになりますが、キャッシュフロー経営というのは「お金の流れ」を重視した経営手法です。
より厳密にキャッシュフロー経営を理解するために、対比出来る概念である「利益」と比べてみるとわかりやすくなるハズです。
突然ですが、「お金(キャッシュ)」と「利益」の違いって何だと思いますか?

急な質問コーナー来た。
● お金は預金残高とかで確認できる
● 利益は「売上-費用」で計算できる
って感じかな?
そうそう、そんな感じです。
キャッシュと利益の違いをわかりやすく端的に表現している言葉があるのですが、それが
「キャッシュは事実、利益はオピニオン」
という言葉です。

キャッシュは通帳やネットバンクでお金の流れが確認出来るから、「事実」。
利益は売上の計上方法や費用の計算方法で変わるから、会社の考え方が反映されている「オピニオン(意見)」と言えるってことか。
以上の話を踏まえた上でキャッシュフロー経営に話を戻すと、キャッシュはとても重要な概念にもかかわらず、売上の成長率やコスト削減、利益の有無に気を取られている経営者が非常に多いということになります。
だからこそ、「黒字倒産」という言葉も存在しているのです。
黒字倒産というのは、黒字(=利益)なのに倒産(=お金がない)する現象をいいます。
別に「売上や利益を軽視しましょう」と言っているわけではありません。
むしろ、キャッシュフローを意識した経営を進めていくことで、守りを固めた攻めの経営に転じることが出来ると僕は思っています。
キャッシュフロー経営のメリット
続いて、キャッシュフロー経営を推進することのメリットについて考えてみます。
メリットはいたってシンプルで、倒産しにくい企業体質を構築出来るという点にあります。
大前提として、企業はお金がなくなったら倒れてしまう生き物です。
イケイケどんどんで営業をかけて、契約を取れていたとしても、現代は「信用」がベースとなっていることからすぐにお金が入ってくるわけではありません。
今は少ない八百屋さんみたいな現金で売買している世界であれば、「売上の時点 = お金の流入時点」という方程式が成り立ちますが、信用をベースに掛売上がほとんどの世界ではこの方程式は崩れます。
そのため、キャッシュフロー経営を意識しないままでいると、
・ 売上はあるのにお金が足りない
・ お金を借りないといけない状況なのに、(利益があると安心して)必要な行動を起こせない
といった状態になりかねません。
反対に、キャッシュフロー経営を意識するようになると、
・ 大切な会社のお金が何に使われているかを把握出来るようになる
・ どのような事業がお金を生み出してくれているかわかり、今後の戦略に活かしやすくなる
といったプラスの影響を享受することも可能となります。
キャッシュフロー経営のデメリット
では、キャッシュフロー経営にデメリットはあるのかについても考えてみます。
結論から言えば、キャッシュフロー経営にデメリットはないです。
「え?なんで?」って聞かれても困っちゃうのですが、お金の流れを意識して、自社の大切なお金の行き先を把握出来る点にマイナスの側面はありません。
中には「時代遅れ」という主張もあるそうですが、キャッシュフロー経営の考え方に「進んでいる」も「遅れている」もないと思います。
昔は「現金売買」がメインとなっていましたが、取引形態の多様化とともに「信用売買」が主役になるようになりました。これに合わせる形で、会計の世界でも「現金主義」から「実現主義」「発生主義」といった考え方が生まれたため、この点をもって時代遅れと言っているのかもしれませんね。
ただ先ほどお伝えしたように、「利益」を計算するためには会計ルールに従い「オピニオン」として計算する必要がありますが、「キャッシュ」は取引結果を反映した「事実」でしかありません。
それだけキャッシュは「普遍的な価値」を持っているとも言えますね。
企業事例①|京セラ
ここからは、実際にキャッシュフロー経営を導入している企業事例を2つほど紹介していきます。
まず最初は、稲盛和夫氏が創業した京セラです。
創業者の稲盛和夫さんは「会計がわからないで経営ができるか!」とおっしゃるほど、会計に関する哲学をお持ちの方です。
そのため、京セラがキャッシュフロー経営を導入しているというよりかは、稲盛さんが創業された会社なのでキャッシュフロー経営を導入しているといった方が正しいかもしれません。
稲盛さんは「7つの基本原則」を掲げているのですが、そのうちの一つに「キャッシュベース経営の原則」というものを取り入れています。
稲盛和夫OFFICIAL SITEに掲載されている文言を引用させて頂いたのが以下です。
近代会計学は、収入や支出を発生させる事実が起きたときに、収益や費用があったものとして計算する「発生主義」に基づいています。
しかし、この方法をとると、決算書にあらわされる損益の数字の動きと、実際のキャッシュの動きとが直結しなくなり、経営者にとって、経営の実態がわかりにくいものとなってしまいます。
経営のベースとなるのは、あくまでも手元のキャッシュであるため、会計上の利益が出ているからと安心するのではなく、「もうかったお金は、どこにあるのか」ということを常に考え、手元のキャッシュを増やすような経営をしていかなければなりません。
そのようにキャッシュベース経営に努め、手元に潤沢な資金を持つことで、企業を安定させるとともに、新たなビジネスチャンスが訪れたとき、思い切った手を打つことができ、新規事業を優位な立場で進めることができるようになります。
稲盛和夫OFFICIAL SITEより引用
一部太字にさせてもらいましたが、稲盛さんがいかにキャッシュフロー経営を重視しているかがわかりますね。
稲盛さんの有名な書籍でも詳しく紹介されているので、興味のある方は一読してみてください。
企業事例②|Amazon
続いて紹介するのはジェフ・ベゾス氏がCEOを務めるAmazon.comです。
意外(?)と思われるかもしれませんが、Amazonは徹底したキャッシュフロー経営を実践しています。
Amazonの経営は語弊を恐れずに言うなら、
「利益は気にしない。成長のためにお金を使い続ける。そして事業を成長させ、人々の暮らしに溶け込む」
といった感じです。
上場企業の場合、株主は株価や配当がインセンティブとなるため、利益重視でない経営をしていると株価は右肩下がりになる傾向にあります。Amazonも株価が下がる時期はありましたが、事業が成長しつづけるAmazonのスタイルに投資家も共感し、株価や時価総額は上がり続けています。
実際に、Amazon.comのSEC filingsにあるデータを用いて財務状況を簡単に分析してみます。
1999年から2019年までの20年にわたる売上と利益の推移をグラフ化したものが以下となります。

期間を2010年以降に限定してグラフ化したものが以下です。


パッと見た感じ、青い棒(売上)がすごい勢いで伸びてるね。
反対に赤の棒(営業利益)や紫の棒(最終利益)は最近顔を出している程度。
このことから、利益をあまり気にしていなくても、売上は成長をし続けていることがわかりますね。
次はキャッシュフローの状況を見てみましょう。
1999年から2019年までのキャッシュフローの推移を同じようにグラフ化したものが以下となります。

先ほどと同様に、期間を2010年以降に限定してグラフ化したものが以下です。


えっと、
・青い棒は、本業から得られたお金
・赤い棒は、将来の成長のために投資したお金
・緑の棒は、お金を調達したり株主に配当したお金 を表しているから…….
年々、投資額(赤い棒)は大きくなっているし、本業から得られたお金(青い棒)も大きくなっていることがわかるね。
このことからも、Amazonは徹底したキャッシュフロー経営を実践し、今もなお成長し続けていることがわかりますね。
Amazonの戦略についてはいくつか本が出ているので、興味のある方は手に取ってみてください。
キャッシュフロー経営の導入方法
最後に、キャッシュフロー経営を導入する具体的な方法について紹介していきます。

稲盛さんやジョフ・ベゾフさんみたいに、会社にとって大事なことに注力して、会社を成長させ続ける姿はカッコイイ・・・
「お金が大事」ってことを意識するだけじゃ足りないよね?
キャッシュフローの重要性を意識して、日頃の経営をすることはもちろん大事です。
ただ、実際には何かしらのカタチで「お金の流れ」を見える化することが重要になります。
具体的な方法としては、「資金繰り表」や「キャッシュフロー計算書」を作成することがベストです。
こういった書類は、自分で作成するには専門性が高く難しいので、顧問税理士に作成を依頼するか、会計システムを使うことがメジャーな方法となります。
そのため、すでに顧問税理士がいる方であれば、「お金の流れを毎月把握したいので作成して欲しい」といった旨を伝えてみましょう。
とは言っても、
・ 顧問税理士が毎月、資金繰り表(キャッシュフロー計算書)を作ってくれない
・ 顧問税理士に依頼する場合は追加で費用が発生する
・ 会計システムではキャッシュフロー計算書が作成出来ない
などなど、キャッシュフロー経営を阻む「壁」が存在することも事実だと僕は思っています。
そこで、こういった課題を解決し、キャッシュフローの状況をリアルタイムで確認することを目的として、
リソース不足に悩まされている中小企業の方向けに「KISEKI」というサービスを開発しました。
コロナの影響もあり、今後はより一層のキャッシュフロー管理が重要になってくるので、良ければ一度目を通してみてください。
さいごに
今回は、キャッシュフロー経営の基本から事例・導入方法まで紹介してきました。
経営の方法に正解はありませんが、過去の勘や経験だけで経営するのは、これからの時代を生き残るにはかなりリスクがあると思います。
キャッシュフローという絶対的な指針を持ちながら、「守りを固めて攻めの経営」をし続けるためにも、キャッシュフロー経営を導入してみてください。
少しでもこの記事が読んでくれた方のお役に立てればうれしいです。
ではでは。