大人になってから「発達障害かもしれない」と感じた時に最低限知っておいて欲しいことを解説
発達障害に悩む人「大人になってから発達障害になることってあるの?発達障害について最低限のことをわかりやすく知っておきたい」
今回はこういったお悩みに答えていきます。
僕自身は発達障害ではありませんが、愛する家族が発達障害です。毎日一緒に過ごす中で、発達障害について僕も深く考えることが多く、同じような想いで悩んでいる人の負担を少しでも減らしたいと思い、この記事を書きました。
本記事の内容
- 大人の発達障害について
- 大人になってから発達障害に気付く原因
- 発達障害と向き合うための方法
この3つについて見ていきます。
「自分は発達障害かもしれない」と今悩んでいる方もいるかと思いますが、あまり不安に感じる必要はありません。自分のことを知る良い機会でもあるので、怖がらずにゆっくり自分と向き合っていきましょう。
大人になってからの発達障害とは
大人になってから発達障害に気付く方は、実は増加傾向にあります。
発達障害の概要と種類、特徴について最低限知っておきましょう。
10人に1人は発達障害とも
意外と思われるかもしれませんが、日本人の約10人に1人は発達障害と言われています。「障害」と付いているので何か深刻な病気と思われがちですが、周りの人と見比べても一見違いはないので、実は自分が発達障害だったというケースは珍しくありません。
この発達障害、一体何かというと「生まれつきの脳の特性が影響して、社会生活に支障を来たしている状態」と言われています。周りの人には出来ているのに自分には出来ないことで、生きづらさを感じている状態とも言えます。
そして発達障害にもいくつか種類があり、それぞれ特徴(特性)を持っています。
ASD(自閉スペクトラム症)
こだわりが強く、対人関係やコミュニケーションでつまづくケースがあるタイプの発達障害です。これまでは自閉症やアスペルガー症候群を含む「広汎性発達障害」と同義で使われていましたが、厳密に区分することが難しく、今ではより広い概念で自閉スペクトラム症と呼ばれることが多いです。
ASDには感覚が過敏または鈍感といった特徴も見られます。例えば車のクラクションなどの大きな音が苦手な聴覚過敏や、気温がわからず服装選びを間違いやすいといった感覚鈍麻が現れることもあります。
ADHD(注意欠如・多動症)
多動性、衝動性、不注意といった特徴を持ったタイプの発達障害です。
- 忘れっぽい
- 遅刻が多い
- 落ち着きがない
- 集中力が続かない
- 整理整頓が苦手
こういった特徴がみられるのもADHDです。
自分なりに努力しているのに、なかなか改善できない場合にはADHDの傾向にあるかもしれません。
SLD(限局性障害)
知的な遅れはないけど「読み」「書き」「計算」の特定能力の習得が難しいタイプの発達障害です。ASDやADHDに比べてあまり耳にする機会は少ないかもしれません。
スムーズに本を読み進めることが出来ない、誤字脱字が多い、九九や簡単な計算が出来ないような場合には、このタイプの発達障害に該当する可能性があります。
発達障害のカタチは人それぞれ違う
と、3つほど発達障害の種類について紹介してきました。
「自分はどの発達障害なのか?」と気になる方も多いでしょうが、実際の特性は人それぞれです。発達障害でも特性は軽く、社会生活に支障を来たさない人もいます。
ADHDでも、みんな落ち着きがないわけではありません。落ち着きのなさよりも不注意の方が症状として表れやすかったり、コミュニケーションが苦手というASDの特徴を合わせ持つこともあります。
つまり人によって違うのが発達障害です。
「自分にはどういった傾向があるのかを知り、その上でどうやって向き合っていくか」を考えていくことが何よりも大切な考え方となります。発達障害だからと言って、悲観することはまったくありません。
大人の発達障害を本で学ぶ
もっと大人の発達障害について知っておきたい方に向けて、2冊ほどおすすめ本を紹介しておきます。
大人の発達障害~仕事・生活の困ったによりそう本
発達障害に関する色々なケースが紹介されている一冊。内容もわかりやすく、大人だけではなくこどもでも理解できるような内容になっています。
女性の発達障害サポートブック
こちらは「女性」向けの発達障害に関する本です。女性ならではの悩みについて詳しく書かれているので、女性の方にはこっちの本の方がおすすめです。
基本、どちらか1冊を読めば十分かと思います。
なぜ大人になってから発達障害に気付くのか?
なぜ大人になってから発達障害に気付くことが多いのでしょうか?
それは「社会との関わり」と関係しています。
集団での関わりがキッカケに
発達障害かもしれないと感じるキッカケは人それぞれですが、社会とのつながりを持った時に気付くことが多いようです。学生時代は成績も優秀だったのに、社会人になってから生きづらさを感じる。こういったケースは少なくありません。
職場の仕事で気付く
社会人になって働きだすことで、発達障害と気付くケースです。事務作業や電話対応、チームメンバーとの共同作業、職場での飲み会など、社会人になるとあらゆる方面で「協調性」や「仕事の正確性」が求められます。
ASDであれば他人とのコミュニケーションとの難しさや苦手意識を感じるキッカケになりますし、ADHDであれば時間内に集中して作業することへの苦手意識を感じるキッカケにもなり得ます。
コミュニティで気付く
職場以外のコミュニティの場で発達障害と気付くケースもあります。特に女性に多く見られますが、ママ友との交流やご近所付き合いといった社会コミュニティが発達障害を知るキッカケとなります。
女性の場合、男性よりも平均的なコミュニケーション能力が高いため、発達障害の特性に気付かないケースも多いようです。
家庭や育児で気付く
こちらも女性の方に多く見られる傾向があります。結婚して専業主婦になる場合、多くの家事をキッチリこなすことが求められる傾向にあります。お子さんがいる場合には、育児と家事の両立まで求められます。
こういった環境下で、思い通りに作業を進められなかったり、整理整頓が出来なかったりと、発達障害の特性に気付くケースもあります。
大人になったから発達障害になったわけではない
個人差はありますが「大人になってから発達障害になった」わけではなく「子どもの頃から持っていた発達障害に大人になってから気付いた」という方が正確です。
先ほどのように、学生時代は何ら問題がなかったのに大人になって発達障害に気付くのは、協調性や正確性が求められる社会と関わりを持ったからこそです。
学生時代に目立つほどの行動を取っていた人(特に男性)であれば、幼少期から発達障害と気付けた可能性はありますが、それ以外の人であれば気付かずに大人になったというケースがほとんど。
大人になったから発達障害になったのではなく、大人になって発達障害を知るキッカケを持ったと言った方が正しい表現かと思います。
大人になってからの発達障害との向き合い方
大人になって発達障害と気付いても、焦る必要はありません。
自分の「個性」として受け入れ、生きやすい環境に身を置いていきましょう。
生活に支障がなければそのままでOK
発達障害の特性や原因について色々紹介してきましたが、1つ大事なポイントをお伝えします。それは「発達障害が日常生活に支障を及ぼすレベルかどうか?」という点です。
- 生活に支障なし → 今まで通りでOK
- 生活に支障あり → 生きやすさの工夫を
日常生活に特段問題がないのであれば、今まで通りの生活を続ければいいだけです。一方で日常生活に支障を来たしていると感じているならば、生きやすさにつながる工夫を取り入れる必要性があります。
今感じている支障を軽減・解消させるための考え方を身に付けたり、支援者へ相談する、環境を変えるなどの工夫を取り入れていきましょう。
苦手を克服しようとしない
まず考え方から。
僕の家族もそうでしたが「他の人に出来てなんで自分には出来ないんだろう」と思うことを何とか克服しようとしがちです。ただこれは逆効果でツラいだけ。
頑張って克服できるものがあればトライしてもいいですが、発達障害はもともと得意と苦手がハッキリしています。そのため「脳の特性で○○は出来ないのだから、苦手を克服するよりも得意を伸ばそう」と考えるのが吉です。
現代医学では脳の治療をすることが難しいため、根治ではなく「生きやすさ」を目指し「個性」として受け入れてみましょう。少しずつで大丈夫です。
相談出来る相手を見つける
自分を支援してくれる人の存在も欠かせません。家族やパートナーの理解が必要となりますが、周りに協力してくれる人がいるならば、少しずつ打ち明けて相談してみてください。
僕の場合、家族との対話を通じて「コミュニケーションが苦手」「周囲が騒がしい場所は苦手」「体温調節が苦手」といったような特性を把握するようにしています。
もし身内に相談相手がいない場合や、いても親身になってくれない場合には公的機関や民間機関に相談してみるのもアリだと思います。
相談できる公的機関と特徴を簡単にまとめるとこんな感じです。
- 地域若者サポートステーション:若者向け支援。発達障害特化ではない
- 発達障害者支援センター:発達障害の専門相談機関
- 障害者就業・生活支援センター:障害者全般の支援。発達障害特化ではない
公的機関は基本無料で利用できる点がメリットですが、すべてが発達障害に特化した相談機関ではないこと、担当者によっては受けられる相談の質が変わることなどがデメリットですね。
24時間以内に専門家に相談されたい場合には民間のオンラインカウンセリングを利用してみるのもおすすめです。有料ではありますが、有資格者のみが在籍するカウンセリングなので、公的機関に比べて質も安心感も高いです。
環境を変えてみるのも手
究極的には「環境」をカスタマイズするのが最も生きやすい道になります。
無理して苦手な仕事をし続けたり、ストレスや不安の感じる環境で生活し続けるのは、思いのほか苦痛です。苦痛レベルで済めばまだいいのですが、場合によってはうつ病、適応障害、不安症といった二次障害を起こす可能性もあります。
「自分にとって生きやすく過ごしやすい環境とは?」
これを考えた上で住む場所や働く場所を変えてみるのも一つの手かと思います。
発達障害を抱える人の働き方としてはオープン就労とクローズ就労の2種類があります。これは【ADHD/ASD】発達障害の人はオープン就労とクローズ就労のどっちがいいのか?メリットやデメリットを考察で解説しているので、あわせて読んでみてください。
【ADHD/ASD】発達障害の人はオープン就労とクローズ就労のどっちがいいのか?メリットやデメリットを考察
「発達障害にはオープン就労とクローズ就労があるって聞いたけど、どっちの方がいいの?」と悩んでいる方向けの記事となります。ADHDとASDを持つ僕の家族の経験も踏まえた上で、メリットやデメリット、必要なアクションについて解説しています。発達障害の働き方で悩んでいる方の参考に少しでもなればうれしいです。
「クローズ就労で働きたい」と決めている方は【ADHD/ASD】発達障害でも転職を成功させよう!【向いていない仕事を知ることが大切】を参考にしてください。
【ADHD/ASD】発達障害でも転職を成功させよう!【向いていない仕事を知ることが大切】
「発達障害を抱えているけど、うまく転職できるのかな?」と悩んでいる方向けの記事です。発達障害で悩む人が転職を成功させるためには、まず何より「自分に向いていない仕事」を知ることが大切です。ADHDやASDの特性を把握した上で、向いている仕事についても触れています。発達障害に悩むすべての人に届けたい記事です。
まとめ:発達障害のことを知り、自分らしく生きる道を探そう
記事のポイントをまとめます。
- 日本人の10人に1人は発達障害
- 発達障害にはASD/ADHD/SLDなどの種類がある
- 発達障害の特性は一人一人異なる
- 社会とのつながりが大人の発達障害を知るキッカケに
- 発達障害で生活に支障があるなら軽減する方法を探ろう
こんな感じになります。繰り返しになりますが、発達障害はその人の「個性」であり、自分らしく生きるためのヒントにもなります。
周りの人と同じように出来ないことを悲観する必要はありません。
むしろ、自分には明確に出来ない「制限」があるということは、自分の可能性を広げていることと同義です。
あれこれ出来ることがカッコイイと思われる風潮にありますが、実際あれこれ出来ると「深み」が出ないんですよね。自分の特性を知ることで、思いもよらないスキルの習得や能力の発揮が可能になることもあります。
日常生活に影響がある方は、できるだけ早く発達障害者支援センターのような公的機関やオンラインカウンセリングを利用して民間機関に相談してみてください。生きやすい自分を見つけるためにも、まずは行動しましょう。
本記事が大人の発達障害で悩んでいる方の参考になればうれしいです。