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中国の超スタートアップ「Luckin Coffee」の粉飾決算からみる「不正のトライアングル」

こんにちは、TAKです。
この記事を投稿した2020年4月3日、中国で衝撃的なニュースがありました。
中国のコーヒーチェーンスタートアップ「瑞幸咖啡(luckin coffee)」が粉飾決算をしていたというニュースです。

luckin coffeeについて知らない方も多いと思いますが、米ナスダックに設立2年未満で上場を果たした非常に勢いのある中国のスタートアップ企業です。

今回は「luckin coffee」の事例を用いつつ、不正が起きてしまうメカニズムを「不正のトライアングル」という考え方を用いて紹介していきたいと思います。

【こんな人に読んで欲しい記事です】
1. 不正のメカニズムについて理解を深めたい方
2. 健全な企業運営のために、不正を防ぎたいと考える経営者や管理者の方

不正のトライアングルとは

不正要因を「3つ」に分類した理論

不正のトライアングルとは、米の組織犯罪研究者である「ドナルド・クレッシー」が提唱した理論であり、不正は「動機」「機会」「正当化」の3要素が満たされた時に起きやすいという理論です。

「トライアングル(三角形)」という言葉からも、ポイントが3つあるとわかりますね。
不正要因となる3つの要素の意味は以下の通りです。

不正要因その1:動機
プレッシャーとも言われ、そもそも不正を犯す根本的な原因・背景のこと
不正要因その2:機会
不正を実行できるチャンスがあるかどうかのこと
不正要因その3:正当化
不正を犯しても問題ないと考える等、不正を犯すことに対する姿勢のこと
一つ簡単な具体例として、パワーハラスメントを考えてみましょう。
パワハラは、上司がその地位を利用して部下をいじめるといったものですが、「部下が仕事が出来ないから」といった動機や、「一緒に仕事をしている」といった機会、「パワハラではなく、部下を指導しているに過ぎない」といった正当化が備わっているから起こってしまうものと言えます。

要は、利己的で不誠実な人間ほど「不正」を起こしやすいと言えます。

不正要因を理解すれば不正リスクを抑えられる

では、この不正のトライアングルを知っていると何に役立つのでしょうか?
結論から言うと、企業内で起こり得る不正リスクを低減し、健全な企業運営を推進することが可能です。

経営者や管理者の立場であれば、「従業員不正」が起こらないような仕組み作りをすることが可能ですし、「経営者不正」が起こらないように意識し、ガバナンスを構築することも可能になります。

つまり、「従業員」「経営者」のいずれであれ、不正に対する「動機」の有無を確認し、不正の「機会」を与えない内部統制を構築し、不正を「正当化」させない組織文化を育てていくことが重要です。

ちなみに、「不正=悪いこと」に拡大すれば、より様々な事象についてモデル化することも可能です。
先ほどのパワハラ(パワハラを受けている側)を例にすれば、要因①(動機)と③(正当化)はコントロール不可能である以上、要因②(機会)を変えるように努めるべきです。つまり、パワハラされる機会を取り除くように周りに働きかけ、環境や職場を変える等の行動を起こした方が良いでしょう(パワハラする側が圧倒的に悪いのは当然として)。実際、僕も新人時代にあるプロジェクトでパワハラを受けたことがありましたが、空気を読まずにそのプロジェクトを抜け出した経験があります。

企業として、今一度「不正」と「組織文化」について考えるキッカケにしてみてください。

中国「超」大型コーヒーチェーンが犯した粉飾決算

「Luckin Coffee」とは何者か?

中国のコーヒーチェーン、瑞幸咖啡(Luckin Coffee)について簡単に紹介していきます。
Luckin Coffeeは、中国人の「お茶文化からコーヒー文化」が拡大する中で、2017年10月に創業したコーヒーチェーンです。翌年2018年1月に北京に1号店を出し、そこから中国全土で店舗数を破竹の勢いで伸ばし、2018年末には2,000店舗ほどまで拡大したと言われています。

その勢いはとどまらず、2019年5月には米NASDAQに上場を果たし、2019年末時点での店舗数はなんと約4,500店舗(スタバは約3,500店舗)まで拡大した「超」勢いのあるスタートアップ企業だったのです。

僕は2016年から2019年の約3年間、上海で仕事をしていましたが、Luckin Coffeeの噂はよく耳にしたくらいです。僕はスタバ派だったので、結局一度も利用する機会はなかったのですが、Luckin Coffeeの特徴は大きく2つありました。

一つはオーダーから決済まですべてオンライン完結という仕組みを取り入れていた点と、もう一つはコーヒーをスタバよりも安い価格で提供していた点です。

当時、中国人のスタッフがよくLuckin Coffeeを利用していたので話を聞いたことがあるのですが、「デリバリーは当然できるし、事前にアプリで注文しておけば通勤途中に店頭で受け取ってから出社できるから便利。しかもクーポンが出るから安く買える」と太鼓判を押していたくらいです。

そんな順風満帆に見えた「Luckin Coffee」でしたが、2020年4月に粉飾決算を認めることとなったのです。

「不正のトライアングル」で考える

粉飾決算の具体的な内容自体は特別委員会が内部調査中とのことですが、現時点では「2019年第2四半期から第4四半期にかけて、架空取引により総額22億元(約330億円)の売上計上や費用の水増し計上」をしていたようです。

順調だったはずの「Luckin Coffee」がなぜ粉飾決算という不正をしてしまったのか、先ほどの不正のトライアングルを用いて考えてみたいと思います。

不正要因その1:動機は何だったのか?
まず「動機」ですが、Luckin Coffeeの経営陣には典型的とも言える「プレッシャー」がかかっていたと言えます。一例ですが、以下のような動機やプレッシャーがあったと思われます。
・米NASDAQに上場したことにより、今まで以上に株主や投資家からの期待がかかっていた
・中国市場最大のライバルであった「スタバ」に対抗心を燃やし、負けるわけにはいかなかった
・役員報酬が業績連動型であった場合、業績低下による報酬悪化を防ぎたかった 等
不正要因その2:機会はあったのか?
次に不正を行う「機会」ですが、結果論的に機会は十分にあったのでしょう。
なぜなら、今回の不正は「経営者不正」に該当し、不正を防ぐための内部統制が無視されていた可能性が高いためです。本来であれば経営者不正を防ぐために、監査役や社外取締役といった「外部の目」を光らせ、ガバナンス機能を発揮すべきでしたが、結果的にうまく機能しなかったようです。
不正要因その3:正当化されていたのか?
これも結果論的な解釈しかできないのですが、不正を行った以上、不正行為は正当化されていたということになりますね。これは実際に役員クラスの方と会って話してみないとわからないことですが、企業の組織文化には企業トップの方のマインドがかなり反映されます。最終的に粉飾決算という形で不正を行ってしまったことから、企業トップはじめ経営陣が不正を容認する組織文化が形成されていたのかもしれませんね。
「不正」は企業ブランドを地に落とし、社会からの信用を失墜させる行為でもあります。
今後、Luckin Coffeeの動向と、中国企業のアメリカ市場からの「見られ方」から目を離せませんね。

まとめ

いかがだったでしょうか?
今回は「Luckin Coffee」の不正事例から「不正のトライアングル」について紹介してみました。

勘の良い方ならお気付きかもしれませんが、不正のトライアングルを知っていたとしても、不正を完全に防ぐことは出来ません。それでも、健全な企業運営において不正リスクを低減させることは、経営管理の視点からは非常に重要な取り組みです。

不正リスクを低減させる仕組みを考えることは、会社の内部統制を考えることにも繋がります。
この機会に是非一度、社内の内部統制を見直すキッカケにしてみてください。

では今回はこのへんで。